
進化し続けるSAABの信頼を守る
はじめに
平塚本社の工場長を務める松本。SAAB入社後、ディベロッパー・営業を経験したのち2024年7月に自ら志願し工場長に就任した。SAABが誇る加工の品質を保ったまま、安定して量産させる体制を整えている。膨大な生産量を誇る工場を率いる彼に、SAABで積み重ねたキャリアやデニムづくりの信念を聞いた。
Text:Sayoko Iimuro Photo:Jun Katsumata

仕事内容(前職〜SAABの強み) 01 : SAABを選んだ理由
ーーお仕事の内容を教えてください。
松本:
平塚本社の工場長として、5部門のリーダーと協力しながら、進行計画の管理・設備や人の配置・あらゆる場面での意思決定を担っています。SAABでは、洗い部門だけでも月6万本、OEM/ODM部門では年間約50万本ものデニムを送り出しています。膨大な数でも1本1本高い品質を保ち、納期に合わせて生産できるよう、日々業務改善を行っています。
ーーSAABに入社した理由は?
学生時代はプロを目指してサッカーに打ち込み、その流れで前職は子どもたちのサッカーの指導者をしていました。26歳の時にSAABに入社した理由は、セカンドキャリアを考えた時に安定した収入を得られる職につきたいと考えたこと、また知り合いの紹介でSAABと出会い平塚本社の工場を見学した時に、体力勝負の仕事であることを知り自分にも向いているのではないかと考えたからです。アパレル業界は初めてでしたが、続けることは自分の特技でもあったので、やってみようと覚悟を決めました。

SAABだからできるチャレンジとは? 02 : SAABだからできるチャレンジ
ーー工場長になった経緯を教えてください。
入社してすぐディベロッパーに所属しました。SAABでは、20代が技術開発を担うことが文化としてあります。その理由は、デニム作りの固定概念に縛られず常に新たな可能性を模索し続けるため。これがSAABという会社の面白さだと思うのですが、「こういう加工をやってみたい」というアイディアそのものが技術開発なのです。SAABが作るデニムを手にするエンドユーザーは20代も多いので、作り手としても若者の感性を重んじて、形にする段階では先輩方の技術が支える、そういう環境になっています。僕自身、アパレル業は初めてでしたが、自分が手がけたデニムが完成した感動や、さらにそれを雑誌で芸能人が履いていたり、街で履いている人を見かけたりした時は、なんとも言えないやりがいを感じましたね。SAABのディベロッパーはお客様との商談の場に同席することも多いので、営業としての経験も積むことができ、次第に一人でブランドを任せてもらえるようになりました。気がつけば入社から15年。40歳を迎えるタイミングで、自分から工場長に志願しました。
ーーなぜ、工場長を志願をしたのですか?
SAABの仕事を一通り知ったからこそ、もっと自分にできることがあるのではないかと考えたからです。特に改善したかったことは2つあって、1つは業務効率をあげてすべてのお客様にご希望の納期通りに納品したいということ。繁忙期など発注が重なった時に、どうしても受注額の多いお客様の発注が優先されてしまうということは理解はできるのですが、お客様と相対する営業やディベロッパーの立場になってみると、やはり目の前のお客様の希望を叶えてあげたいはず。なので、生産工程でのロスタイムを減らすなどの工夫によって、業務効率をあげたいと考えました。
もう1つは、SAABが評価されている技術開発力を量産分にも反映させ、よりよいデニムを世の中に出したいという想いです。僕たちの仕事は、デニムづくりにおける長いリレーの一部。糸を紡ぐ業者、染める業者、生地にする業者、付属品を扱う業者からのバトンを受け取って、縫製・加工・仕上げ・出荷と進めていきます。ゴールは、お客様を介してエンドユーザーの手に届くことなので、自分たちがいかに品質の高い仕事をして次へのバトンを渡せるかという部分にもっと注力したいと思いました。そうすると、お客様に満足していただけるサンプルが1本できたとして、それを工場のメンバーに「はい、これ作ってね」と依頼して役割終了でいいのだろうか?と考え始めたのです。量産の現場は何かとイレギュラーなことが起こりうるもの。ディベロッパーも営業も経験し、お客様目線にも作り手目線にも立てるからこそ、各部署とコミュニケーションを取っていくことで、もっとSAABのものづくりを強くできるのではないか。そういった思いから志願しました。
SAABの好きなところ・魅力 03 : SAABのプロ意識
ーー工場長として気を配っていることは?
これまでの部署と違うのは、僕が手を動かすのではなく現場のメンバーに動いてもらって、目標を達成するという点です。最新テクノロジーも積極的に取り入れてはいますが、デニム作りの多くの工程は人の手で行っています。5部署が関わってデニムを作るので、連携しやすくなるよう密なコミュニケーションを心掛けています。「自分の部署だけ良ければいいや」だと、やっぱりいいものづくりはできないですからね。そして何より忘れてはいけないのは、SAABとしての役割をベストな状態で全うすること。僕たちのもとに来るまでに、糸を紡いで生地を織り、染めて縫製をしてという工程があります。生地も生き物ですから、数千本単位の生地をすべて均等に仕上げるというのは至難の技です。前工程を繋いできてくれた方々から受けつぎ、さらに僕たちが加工の段階できめ細やかな調整をして均一の仕上がりを目指し続けることで、製品としての仕上がりは大きく変わります。どんな状況で手元に来ても、自分たちの役割の中で調整して、より良いものに仕上げるのがプロの仕事。この意識は忘れてはいけないと思っています。

未来 04 : 今後の目標
ーー今後の目標を教えてください。
工場の直近の目標としては、生産キャパを上げていくことです。お客様からの要望でもありますし、例えば1日に仕上がる本数が10本から100本になれば、より多くの品質の高いデニムを世の中に届けられます。そのための課題はいくつかあって、まずはディベロッパーが開発した加工レシピを効率的に生産できる道筋を考えること。ディベロッパーが3時間かけて仕上げたクオリティを、現場では工程ごとに20秒ほどで施すようなスピード感なので、両方が成り立つ生産効率は常に考えなければなりません。技術開発のメンバーに向けて「量産を視野に入れたレシピにして」と働きかけることも必要ですし、現場メンバーの技術の底上げも同時にしていかないといけないですね。
SAABの魅力は、革新と挑戦にあります。そして、その成果を業界に還元していく気概もあります。展示会を開いて新たな技術や薬品の情報を開示していること。Made in Japan・Made in SAABのデニムをさらに増やしていけるよう新しい工場の設立やカンボジアにも加工場を設立したこと。最新機械の導入など設備面での充実やよりよい労働環境への整備も、世界の基準と常に照らし合わせてアップデートし続けています。攻め続けるSAABの本社工場の長として、その成長を確固たる地盤で支えられるよう、1本1本の品質を守っていきます。

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